徒然映画録『STAND BY ME ドラえもん』~乾いている真実

徒然映画録『STAND BY ME ドラえもん』~乾いている真実

なぜかドラえもんの映画の感想が二週連続。
これは偶然です、たまたま。
この際、一気にドラえもん映画観るのもありかしら?

さて、『STAND BY ME ドラえもん』の感想を。

まず、この映画は映画用のストーリーではなく、
過去のドラえもんエピソード、
具体的には7本のエピソードをつないで、
一本の映画にしたものになります。

ですので、この映画には原作イメージが
けっこう色濃く残されています。

主軸はドラえもんとのび太の出会いと別れ、
それからのび太としずかの愛の成長過程が描かれます。

で、この映画を観て思ったこと。

藤子・F・不二雄って天才。

以降は映画の感想ではありませんので、
今回の記事はタイトル詐欺です。

私は原作の一部を漫画で読んだことはあります。
アニメのドラえもんはみんなけっこういい子ですが、
原作では意外と粗暴な言動が見え隠れします。

ストーリーラインは原作と今回の映画で大きくは違いませんが、
そんな原作の見え隠れする粗暴さが、
本当に鋭く人間の本性を映し出しています。

たとえば、映画ではドラえもんが未来に来て、
最初にどら焼きを食べるシーンがあります。
ドラえもんを客として、
のび太がもてなすために出したお菓子ですね。

ドラえもんはそのどら焼きを口に入れた途端、
「おいしーい!」と飛び上がって喜びます。
「こんなに美味しいものは食べたことがない」とも。
それはそれでドラえもんの反応としてアリです。

でも、原作ではけっこうこの描写が違います。

そもそも、ドラえもんが最初に食べたのって、

お餅。

まあ、その違いはこの際どうでもいい。
私が好きなのは、この後のドラえもんの感想。

「うまいもんだなあ」

なんかね。
いいと思いません?

確かに演出としては、
映画の方がわかりやすいし、
「あー、こうやって好物になったんだなあ」という
説得力はあると思います。

でも、それはわかりやすい反応と
わかりやすい言葉で描写されるからであって、
ドラえもんというキャラクターの反応とは
ちと違うかもしれません。

原作のドラえもんは、
多少説教くさいところはありつつ、
意外とドラえもん自身がごろ寝でマンガ読んでたり、
のび太と悪巧みをしたり、
のび太を「バカでノロマだなあ」と馬鹿にしたり。
かなり人間臭いところがあります。

そんなドラえもんがお餅を食べて
「うまいもんだなあ」という感想。
「美味しい!」というよりも、
人間臭くて生きている感覚があります。

論理的にどうこうは言えないんですが、
「乾いている真実」を私はここに見ています。

度々このブログでも触れるワンピースもそうですね。
あの話で、私は24巻のモックタウン編が好きです。
空島の前に寄る島です。

アラバスタでも感動したんですが、
その後の島はなんというか、
本当に「乾いている」んですよ。

海賊の滞留する街で、暴力や詐欺や殺しは当たり前。
海賊王は誰かの作った夢物語。
そんなファンタジーは信じない人たちがいる街です。

そこでのルフィもなんか……乾いているんですよね。
アラバスタであんなに涙流しまくったのに。

空島への行き方を聞いた店で、
ベラミーという海賊に馬鹿にされ、散々殴られ、蹴られ。
それでも一切反撃しない。何かを言い返すこともない。

それで、ボロボロになって出たところで、
黒ひげと出会うことになります。
そこで黒ひげがルフィに叫ぶ一言は名言です。

「人の夢は終わらねェ!」

が、ここでもルフィは言葉を返さない。
「ああ!」とも「当たり前だ!」とも叫ばない。
黒ひげの目を見るだけで、二人は別れます。

でも、彼の中には確かにその信念はあるんです。
それが彼の無言から感じ取れる。
それがルフィという男なんです。

言葉や仕草で返すことに比べたら、
彼の信念を読み取るのは難しいかもしれません。
でも、ルフィという人間の重みは、
無言にこそ秘められていると感じるのです。

これも「乾いている真実」と思います。

実際、普通に生きていて、
そんなにわかりやすい言葉や動きで
何かを実感することってないんですよね。

日常のどうでもいいことの中に、
不意に途方もない実感を伴うものです。

私も受験を終わらせときがそうでした。
合格通知を受け取ったときももちろん嬉しかった。

でも、今でも印象に残っているのは、
楽しみにしていたゲームを遊び、
いくらやっても母親に怒られなかったとき。
「あ、自分って受験終えたんだなあ」と実感しました。

話が飛び飛びになりましたが、
藤子・F・不二雄のすごさって、
そういう部分にも出てると思います。
だから、ドラえもんは面白い。

なんか説明が難しいのですが、
そういう感覚をこれからも大事にしたいと思うのです。

うまいもんだなあ。(しみじみ)

bantenmaru