映画感想

徒然映画録『カルト』 ~お作法を考える

もう十二月も半分にさしかかりました。
いよいよ本格的に寒くなってきて、朝や夜は手袋が手放せないですね。
でも朝は澄んだ空に昇る暖かな太陽が、
夜の街はイルミネーションに彩られて、
心がほっこりするのもこの季節ならではです。

だから観ました、ホラー映画『カルト』。
そこ! 意味分からないって突っ込まない!

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これは日本のホラー映画です。
ある一軒家に起こる怪現象の秘密を探るため、
女性芸能人三人が霊の専門家と一緒に取材に行く。
そんなところから物語が展開していきます。

細かいところはDVDを観ていただくとして、
その後、恐ろしい怪現象に古典的霊能力者二人が倒れ、
チャラいホストみたいな霊能力者が調べることに。
そしてこの怪現象の秘密が明らかになりはじめたところで、
「本当の戦いはこれからだ」でこの物語は終わります。

ええ、うすうすお気づきかもしれませんが、
この物語は明らかに玄人向けの作り方をしています。

まず「女性芸能人が取材する」という設定。
この物語はディレクターが撮影するカメラを通して語られます。
だから、途中でカメラを持っているディレクターが物語に関わることも
不自然ではなく私たちが受け入れることができます。
これは私たちがテレビを普段見ているからわかるお作法です。
特に最近のバラエティは、ディレクターがカメラに写ることが普通になっているから、なおさらそれを自然と感じられるんですね。

そしてホラー的な部分もまさしくテンプレしています。
家に入る前に映った薄闇に人の顔が見えたりとか、
ビデオ映像に人の叫び声が映ったりとか。
「おわかりいただけただろうか?」

最後に、チャラホスト霊能力者の最後の台詞はまんまですね。
「本当の戦いはこれからだ!」

こうしてみると、テレビ・映画・マンガのお作法を組み合わせて
この物語が作られているわけです。
日本ならではの文化ですね。
こう考えると、自分の二次創作に通じる部分があり、
逆にそうでない部分もあるなあ、と感じます。

もちろん「既存のお作法を利用する」方針は共通してます。
既存のお作法=鑑賞者の共通認識です。
「これがこうなれば、ああなるよな」という認識は
物事の説明を省くときにはすごく使いやすいです。

私は秘封の二人をよく書いていますが、
蓮子とメリーの設定をいちいち書きません。
それは皆さんの中にある共通認識を利用させてもらっているからです。

で、私はだいたいその認識通りに物語を進めますが、
たまにその認識を途中で大きく裏切る設定を明かしたりします。
というか、ほとんどはどこかで「普通」の認識を裏切っています。

でも、この映画はそうではありません。
逆に三つのお作法を裏切ることなく、
そのお作法に乗っ取った上で物語をつくっています。

これって、意外と簡単そうで難しいことと思います。
お作法から外すのは自由度が高いのですが、
お作法を守りとおすのはその自由度をなくすということです。
これは大きなチャレンジだと感じました。

そんなことを考えるとホラーというよりは、
そんな物語の作り方だったり文化のとらえ方が面白かったです。
メタ的な視点を理解していてなお、
お作法を守って作るという物語でした。

じゃあ、今回の記事はここで締めます。

「すーっ……せいっ!」

この物語続きありますか?(真剣)