『妹光物語』(in 大触手パワーガッツ) ~裏話

はい、まずは私がなんで「東方触手合同」に参加してしまったのか? そこから。

だいぶ前になりますが、私は2013年の冬コミで「秘封処女膜合同」なるものを企画しました。これも題材がわけわからんと思いますが、そこにアン・シャーリーさんが参加されたのですね。そう、今回の触手合同の主犯……もとい主催です。すごくやりづらい題材だったろうと思いますが、アンさんと生パンさんのぶっ飛んだ作品によって、個人的にはすごくいい本になったなあ、と感慨深かったのです。
今回、その恩返しの気持ちで「東方触手合同」に参加した次第です。

しかし、触手。しかも「触手パワーガッツ」なんて、これまたとんちきなタイトル。どう考えてもエロとかギャグの雰囲気を想定されてしまいます。お察しの通り、私はギャグが大の苦手なのです。どうしようと真剣に悩みました。

ギャグから逃げてはいけない、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ。
――そうだ、私が存在そのものがギャグになればイイネ!

ということで、逆転の発想により、私はクソ真面目な話を書くことにしました。いつも通り! 思考放棄とも言う。ついでにエロも苦手だったので、今回全年齢になったのもラッキーでした。

さて、そんなきっかけで参加表明したものの、最初っから大ピンチ!
なーんにもネタが思い浮かびません。
触手ってなんやねん!? 処女膜ならどうにでもできるが(いや、なんでだろう?)、触手で全年齢って、何やればいいのだろうか? そりゃあ、巷にある触手シチュは見たことはありますが、ハマったことはないし、ましてや書いたこともない。もっといえば、触手って文字媒体に向いてないのでは……。

そんなことで、まずは「そもそも触手の何がいいのか?」から考えることにしました。なにしろ日本人は触手好きですからね。鉄棒ぬらぬら先生をはじめ、歴史あるジャンルです。

触手って、よくあるシチュだと、女騎士が敵に捕まったときに出てきますよね。そうなの? あれの何が興奮するって、自由に身動き取れないけど、強制的に感じさせられるってところ。本当に? でも、身動き取れないなら、拘束だけでもいいわけですよね。マジで? 拘束と違う点があるとしたら、生物的に動いて、ヌルヌルてかてかしてることですね。ほーん?
という具合に、「自分は触手を知っているようで実はまったく知らないな」と自問自答しながら、テーマを考えていきました。
そして、大きく分けて「束縛」「生物」「意思」の要素が大事だろう、という結論に至りました。まあ、それだけで話ができるわけもなく、しばらく放置したんですが……。

その間、私のプライベートで色々ありまして、「家族」を意識することがありました。そのとき、「廻るピングドラム」(今度映画やりますね!)でも描かれたように、家族であることはいいことばかりでなく、繋がりがあるがゆえの呪い、束縛があることを思い出したのです。
その瞬間、この触手という題材にうまくハマるのを感じました。家族の「束縛」と、触手のエロ要素が繋がったのですね。家族の束縛とエロといえばもう「不倫」しかない。ここから話の枠組みを固めていきました。

東方の二次創作を描くにあたり、不倫が絡むキャラクターは……そう、輝夜と妹紅です。そして「束縛」の題材にふさわしいのは妹紅ではないでしょうか。妹紅の父親は竹取物語で輝夜に惚れたあまり、妹紅の人生を狂わせたのですから。妹紅が主軸になるのはすぐに決まりました。

じゃあ、妹紅を主人公に据えればいいじゃないか、と思うかもしれませんが、そうしませんでした。今回だけは、個人的な経験から「不倫をきっかけに家族に愛憎を抱いた人を眺めること」を重視したかった。妹紅は直接的に父に愛憎抱いたでしょうから、別の視点が必要となります。
そこで、当初は慧音を主人公にしようとしたのですが、うまくいきませんでした。なにしろ、彼女は妹紅を大事にしすぎている。それに慧音なら竹取物語を熟知しているでしょうから、妹紅が家族に対する愛憎込めた気持ちを理解できてしまうでしょう。
それでもなんとかできないかと考えましたが、慧音が不倫して、妹紅がその告白を聞くという、ますますよくわからない話になりかけました。
最終的にオリジナルキャラになったのは消去法でした。不倫の話をある程度遠い位置から聞ける状況も作れるし、家族の話も書けるし。

しかし、また困ったことが出てきました。今度は主人公の一人称で話を書くことが難しい。幻想郷の人里ですから、お上品な会話はあまりしないでしょう。かといって、地の文を訛った感じで続けるのもつらい。
そこで、最初の構想に出てきた慧音に戻るわけです。彼女なら歴史書を作っている設定もあるし、学もあるので一人称を硬い文章で書ける。

さらに、あるピースがハマり、これが今までの要素を見事に繋げてくれました。
それが「源氏物語」。古典日本文学の傑作です。この物語には不倫要素もあるし、家族の束縛の要素もあるし、エロもあるし、光源氏のモデルの藤原道長は妹紅の血縁者。慧音が伝聞として語り部になるのも自然。いやあ、これに気づいた時は驚いた。

こうして、今回の物語は源氏物語をオマージュしたお話になっていきました。

テーマ自体は、今回はっきり明言したので、ここでは書きません。最近、はっきり書くのが恥ずかしくてやっていなかったのですが、「源氏物語」が当たり前のように泣いてると表現したり、運命の特異さを描くので、今回はそれに合わせました。

しかし、今回色々うまくハマったわりに、どうにも振り切れませんでした……。というか、どう考えても途中で力尽きてます。冒頭は頑張って源氏物語してたんですが、翁が亡くなったあたりから、手癖が出てきました。

つくづく思ったのは、私は心の奥底にある小さな矛盾を書き出すのが好きだな、ということです。それをどうやって言葉にするか、昔も四苦八苦してたし、今回も図らずそうなってしまってやっぱり四苦八苦しました。
そもそも、源氏物語も心の機微を丁寧に描写していますが、そこまで多くの要素を入れなかったり、さらっと書き流して読みやすくしている。私もそうすればよかったですね。
当たり前ですが、心の中はスッキリ一本線ではなく、色々なものが絡み合っている。一方、物語は一本の線で読まれるものなので、要素のつなぎ方が腕の見せ所になります。複雑なところはどう繋ぐか、最後の最後まで順序にこだわらなければいけないんですが、まあ……できませんでした。〆切があるとこういう感じになるのでいかんなと思ったりもしますが、ちゃんとできなかった自分の方がいかんですね。

そして、妹紅が過去を語ろうとする箇所。実は途中まで、妹紅が長く過去をしゃべることを想定していました。しかし、時間がなくて思いっきりカットした経緯があります。
ただ、これは単純に時間がないがゆえの判断ではなく、元々過去をしゃべらせることにも抵抗がありました。まず、読者の多くが彼女の過去を知っているだろうということ。そして、最後に妹紅が過去を語ることで、あまりにも説教くさくなること。
それで、中途半端に語らせてぐちゃぐちゃになるならカットしようと判断しました。本当は妹紅の過去を入れないと「妹紅の父親の不倫を遠くから見る」コンセプトの初志貫徹にならないのですが、次善策としてやむをえなかったかな。

こうして最後に懺悔しつつ(言い訳にしか見えない)、この触手合同の今回の裏話の幕を下ろします。
まあしかし、今回は本当に遠い題材をよく自分のフィールドに引っ張ったな、と素直に感心している部分もあったりします。色々考えた要素をまとめるところまでは、とってもうまくいったとも思っています……やっぱ、のぞみぞで力尽きてたな……。

でも、これで恩返しは果たした! ……はたして、果たしたのか!?
次はもうちっとヤバい話を書こうと思っています。