徒然漫画録『ゴールデンカムイ』〜勢いと空気がすごい!

なんだろう、ひっでぇけどすごく印象に残る漫画でした。

もう連載開始から8年近く経っているんですか? 今更ですが、無料公開期間だったので『ゴールデンカムイ』をこのゴールデンウィーク期間中に一気読みしてしまいました。最初はのんびり北海道紀行的な流れでしたが、最後の戦いから怒涛の展開になったので、夜中まで読み耽ってしまいました。

「ひっでぇ!」展開

最序盤と終盤はとても真面目なのですが、その間はこの漫画、本当「ひっでぇ!」展開が多いです。悪い意味ではなくて、奇天烈すぎるという意味での褒め言葉。(褒めてんのか?)

露天風呂入っていて敵に襲われたのでフリチンで戦わないといけなくなったり、みんなで慌てて逃げ込んだ小屋で男同士ムラムラしたり、獣姦したり、自慰対決したり……って振り返って書いても、マジで何書いているんだこれ?

そして、ほとんどの展開でツッコミ不在という恐怖。みんな真顔で何やっているんだ? 後半の宇佐美シコシコでようやくまともなツッコミが入ったので、逆にそれがシュールすぎて笑ってしまうという異常事態。

んもう〜〜〜!(笑)

あと、扉絵も大ゴマでもパロディが頻繁に入ってくるのも笑ってしまいます。だいたい被害者(被害者か?)が白石なのも定番。

人殺したちの価値観

さて、この物語は日露戦争後の日本を舞台にしており、メインの登場人物たちも軍人が多いので、かなり殺伐とした展開があるのも特徴です。人がバッサバッサ死んでいくし、えぐい描写もかなりあります。苦手な人はとことん苦手でしょう。

そんな展開なので、主人公の杉元をはじめとして、人を殺すことについてそれぞれの価値観がちゃんと描かれているのは必然かもしれません。必然でしょうが、ここまで色々ぶつかり合った作品って意外とないのではないでしょうか?

特に印象に残ったのは尾形ですね。彼の過去は相当しっかり描かれていましたが、その目的が明らかになったのは本当に最後だったのでなおさらでした。でも、彼の死に際は悲しいものでしたが、道中は決して悪くなかったと思うんですよね。杉元はその道中で大きく変わっていったのに、尾形だけは変わったように見えつつも決してその価値観を曲げることはなかったのが余計に悲しい。

アイヌたちの文化

ゴールデンカムイは相当アイヌ文化の紹介が多いです。そして、ちょっと変わった風習が、長年の知恵に基づいているものだというのが感心してしまいました。我ながら単純ですが。しかし、そうは言いつつ、銃を使うアイヌたちも当たり前のように登場してきて、ここは私個人としては「いいなぁ」と思ったところでした。

まあ、時々出てくるじゃないですか、「昔の日本は良かった」的な映画とかドラマ。何とは言いませんが。でも、たいていそういうのって昔のことをやたら美化していて、闇の部分だったり不便な部分だったりって出てこない気がします。友達の待ち合わせも、相手の実家に電話して、時間と場所をドンピシャ指定しなきゃいけなかったんですよ? 少しでもすれ違ったらもう終わりじゃないですか。そういうのも今となっては味なのかもですが、その当時ならとてもイラつくと思います。

でも、この漫画では当時の最新技術をアイヌも取り入れ始めている点もあり、決してアイヌの文化スゴイスゴイと手放しに礼賛しているわけではないと思うのです。スゴイけどね、周囲の環境が変わったら、知恵を更新していく必要がありますから。

しかし文化は文化としてきちんと残していく意味があります。なぜその文化が生まれたのかを知ることで、新しい技術や文化を生み出していく土壌になりますから。そういう意味でアシリパさんの最後の決断はとても尊いものだと思いました。

とにかく勢いがすごい漫画でした

以上、主だったところをピックアップをしましたが、これはとても書きやすいところを書いているだけです。本当のところは、この勢いというか、雰囲気がすごいです。ここはなんといえばいいのかわかりづらいのですが、熱い展開なのに急に「スンッ」となるシーンがあるのに、その違和感がないのです。なんなんでしょうね、これ。あとは、ネットでネタにされまくっていますが、1ページで強烈に印象に残るのもかなり多くて、1話あたりの満足感が妙にあります。これも良いところでした。

また、それと別で風景描写もすごくいいです。結構見開きで精巧な背景が出てくるのもこれもよかった。あの勢いを楽しむなら、コミックスというより電子版で大画面で楽しんだ方がいいかもしれません。