徒然映画録『シン・ウルトラマン』〜不合理な選択、それが気持ちいい

ウルトラマン作品をひとつも見ていないのに、話題性だけで映画を観るなんて、不合理な選択です。
しかし、「不合理な選択」……私の好きな言葉です。

カッコいい。そして胡散臭い。

メフィラス役がハマりすぎ山本耕史氏が話題となった映画、『シン・ウルトラマン』。私も観てきました。

公式サイトより。

冒頭にも書いた通り、私はウルトラマン作品をひとつも見たことがありません。というか、子どものときから特撮系作品を何ひとつまともに観たことがありません。嫌いなわけではなく、たまたま観る機会がなかっただけですが……。

そんな「にわか」が本作を観に行ったのは、庵野監督作品である『シン・ゴジラ』がとても楽しめたからです。そんな彼が本作では企画・脚本です。まあ、観に行きますよ。そんなことは庵野氏も承知しており、冒頭からかましてくれるサービスっぷりです、うん。そして、大枠で「シン・ゴジラ』と同じノリでこの作品も十分に楽しめました。強大で未知なる敵に対し、人類とウルトラマンがいかに知恵と根性で戦うか。その攻防にハラハラします。

しかし、今回は『シン・ゴジラ』と違う点も3つあり、その点では今作の方が私は好きかもしれません。

その1 ウルトラマンの謎

まず、本作はウルトラマンという強大な味方がおり、彼自身の謎や心情が丁寧に描かれています。

正直、最初の登場シーンから「あれっ!?」と大きな謎が出てきます。ネタバレになるので細かな言及は避けますが、ビジュアルがいきなり謎です。そこから「そもそもウルトラマンとは何者なのか?」という謎を追うことになります。

そして、彼の正体が明らかになるにつれ、今度は「なぜウルトラマンが人類に味方するのか?」という謎が生まれてきます。そして、この謎こそがウルトラマンと敵たちを分けるキーとなります。

この謎の答えはちゃんと明かされますが、ここが『シン・ゴジラ』と違ってヒューマンドラマチックであり、胸を打たれる部分です。ありきたりな結論かもですが、美しい答えだと私は思いました。

その2 不合理な選択の気持ち良さ

次に、理屈に合わない選択をすることの気持ち良さです。実は先のことと大いに関係します。

劇中、主人公たちは様々な選択を迫られます。敵と戦う方法もしかり、敵の陰謀を暴くこともしかり、不平等な交渉を迫られることもしかり。当然、それらの場面では少しでも自分達に有利となるよう、合理的思考を巡らせるわけです。

しかし、その中で、わけわかんない選択をしている人がいます。ハイ、ウルトラマンさん御本人です。

そもそも、なぜ人間に味方するかも謎なのに、しばしば変な圧で相手を押し切ります。観客から見ても論理的ではないはず。でも、なぜかウルトラマンがそんな不合理な選択をすることが気持ちいい。そして、彼がそういう選択をするときには、禍特対のメンバーのためなのです。ウルトラマンが彼らを仲間として「信じる」ときに、不合理な選択をする。

先ほどの「気持ちよさ」は、この「信じる」ことの力強さに対して感じるものだろうと私は思います。理屈はない、でも信じたい。ウルトラマン流に言うなら「それが群れ」なのでしょう。我々人間はそんなシチュエーションに弱い動物なんです、つい感動しちゃう。

その3 オマージュしている場面にあえて残る違和感

そして最後。それは「元ネタを知らなくても十分楽しめるが、過去作品をオマージュしている雰囲気が見える」という点です。

公開当初から、Twitterにはウルトラマンをよく知っている、いわゆる「オタク」の人たちがあれこれ考察をしている様子が見受けられました。正直、私はそういうのをいくつも見てしまったゆえ、「元ネタ知らないと楽しめないのかなあ」と勝手にハードルを上げてしまいました。

しかし、実際に観てみると、ウルトラマンのことを一切知らなくても十分楽しめる作品でした。作中の禍特対のメンバーもウルトラマンに初めて遭遇するわけなので、当然でしたね。そういう意味では、ウルトラマン初心者向けの作品と言えます。

でも、そんな中で、ちょこちょこ「あれっ!?」というシーンが登場します。基本的には最新の技術で綺麗な映像なのに、いきなりちょっと古臭い演出が出るんですよね。というか、スペシウム光線がまさにそれです。こういう演出の時、悪く言えば違和感があります。しかし、その違和感こそが「こういう演出をやりたかったんだ!」という作り手の気持ちが垣間見える手がかりともなります。

いわゆる「オタク」はこういうの好きなんですよ、元ネタ探し。聖地巡礼やりがちですから。こういうとっかかりがあれば、元ネタを特定しにいく。結果、本作をきっかけにウルトラな沼、つまり過去作へのめり込んでいくわけです。私も自分が物語を作るときにオマージュやるので、この気持ちはよくわかります。そして、オタクでもあるので、こういうオマージュを見せられると、つい辿りにいっちゃいたくなる。

単体の作品としてみれば、このオマージュ演出は不要かもしれません。しかし、ウルトラマンという長く続いてきた作品だからこそ、あえて違和感を残してオマージュすることの価値があると私は思いました。まあ、単に庵野氏がウルトラマンを好きすぎて暴走してしまった可能性もあるのか……?

以上、『シン・ゴジラ』と異なって楽しい点を挙げてみました。
庵野氏が関わる「シン」シリーズなので、以前ほどの驚きはないかもしれません。しかし、そういった目新しさを差し引いても、純粋にエンタメとして楽しめる作品として私は好きです。そして、ウルトラマン作品の沼にハメる導入としても、恐ろしいほど上手くできています。

まあ、つべこべ言わず、観に行きましょうよ。
「兵は拙速を尊ぶ」……私の好きな言葉です。