今回は、ゲーム「ファイナルファンタジーⅨ」の感想です。これまた今さら、と思いきや、最近FF9の発売25周年を記念して、色々イベントが盛り上がっているんですね。さて、今作は前作「VIII」と比べて物語が非常によくまとまっており、主人公たちも丁寧に描かれていて、私個人としては、ファイナルファンタジーに求める要素を完璧に満たしてくれる、満足度の高いゲームでした。

ブレることのないストーリー
このゲームでのストーリーは、とにかく自分たちが目指すところがわかりやすく描かれているのが良いところだと感じました。序盤はガーネットを誘拐し、様子のおかしいブラネ女王が変貌した原因を探る、ということになります。つまり、プレイヤーにとって、当面はブラネ女王を倒すべき敵として見定めやすい状態に持っていってくれているんですよね。さらに、ブラネ女王の背後にさらなる巨悪が存在していることも見えやすい。
最初からジタンたちに対して大砲をぶっ放すあたり、まず彼女を敵と考えて疑うプレイヤーはいないでしょう。その後も、中盤までワルツシリーズを繰り出したり、刺客を差し向けてくるので、彼女を敵として見失うことがありませんでした。ここら辺が「8」と違う部分です。「8」はガルバディアがあっさり魔女に乗っ取られ、その魔女も本当に倒すべき敵か?とブレることがありましたから。

そして、後半からはブラネを背後からそそのかしていたクジャが本格的に対峙すべき相手として出てくると。変則的なのはガーランドがさらに物語に乱入して、三つ巴の様相を見せる部分ですが、それもガーランドの因縁もクジャ自身が回収することで、最終的にはクジャ一人が敵として焦点が当てられるようになります。これも今一度シンプルなエンディングに向けた構成として上手いなと思いました。
と、大きな流れとしては非常にわかりやすくまとまっており、プレイヤーがある程度間を置いても物語の流れを見失うことがなく、印象としても残りやすいシンプルさが表面に出ています。
キャラクターの掘り下げが丁寧かつ深い
ストーリーはシンプルながら、それらを構成するキャラクターたちの描写が丁寧なのも、このゲームの大きな魅力の一つですね。
特にビビについては最初から最後まで、その丁寧さが貫かれていたように思います。最序盤のダリの村でいきなり出生の秘密が明かされるという展開には私も驚きました。普通、主人公たちの過去は中盤以降に出てくるものだと思い込んでいたので、なおさら。
しかし、自分の出生の秘密を知って、自分とは何のために生まれてきたのか、どうやって死ぬのか、死ぬことについてどのように向き合うのか。リアルの人間一人だって考えるのに一生かかるものを、ビビがきちんと一つ一つ答えを見つけていく過程が描かれており、だからこそ最後のビビの手紙では胸が熱くなりました。

また、スタイナーも非常に良い味を出しているキャラクターだと思います。ガーネットの誘拐シーンから、すでに頑固者のコミカルな面が出ていて、非常によく目立ちますよね。しかし、頑固者なのでなかなかガーネットやジタンの考えについていけず、私も若干イラついてしまうシーンもあったりしましたね、トット先生のところとか。しかし、その考え方が徐々に変化していくこともしっかり見えるようになっており、ラストの脱出直前には、ガーネットとジタンに対して空気を読んで気を遣ってくれたりもしました。
ブラネ女王もまた、悪役として登場しながらも、なかなか忘れられないキャラクターですね。先ほど書いたように、中盤まで倒すべき敵として描写されていながら、彼女が最期に見せた姿には、ガーネットへの母としての深い愛情が描かれており、そのギャップに胸を打たれました。彼女の強欲さを彼女自身が自覚しており、そのことを「悔いはない」と言い切る潔さ。でも、そう言い切りながらガーネットに「お前も好きなように生きなさい」というあたりに、やはりどこかガーネットに申し訳ないと思う気持ちが残っていたのではないかと思わせてくれるのですよね。それに対してガーネットも、どんな非道をされたとしても、ブラネを一人の母としてみていることにも、複雑ながら熱い二人の想いを感じました。
あえて惜しい点を挙げるなら
多少残念な点がなくはないです。ゲームシステム自体は非常にオーソドックスで、最近のFF作品と比べると、バトルに工夫の余地が少ないようには思います。私としては、それがかえって物語に集中させてくれる良いバランスだと感じますが、「8」の斬新なシステムに比べると見劣りはしますね。

また、キャラクターの描写が丁寧、と書きましたが、フライヤとサラマンダーは少し不足する点があると思います。フライヤは魅力的なキャラクターなのに、恋人の記憶を取り戻すという重要な伏線が回収されず、キャラクターの掘り下げが非常に薄かったのが残念です。サラマンダーも同様に、もう少し掘り下げて欲しかったな、と。ジタンとの確執を城のトラップがあっさり解決してしまって、ちょっと拍子抜けしました。
まとめ
とはいえ、惜しい点も全体から言うとかなり些細なこと。今まで書いてきたように、ストーリーのわかりやすさ、キャラクターの掘り下げ、そしてPlayStation末期に発売された作品でありながら、その映像美は今見ても全く色褪せていません。
令和の今でも、本当に素晴らしい作品だと思います。ストーリー、キャラクター、ビジュアル、どれをとっても「ファイナルファンタジーIX」は、FFシリーズの中でも、特に物語の完成度が高く、心に残る作品だと感じます。

先に書いた通り、25周年ということで、リメイクの期待もあるかもしれませんね。まあ、7リメイクシリーズが完結してからじゃないと、流石に発表は難しいでしょう。私個人としては、リメイクしなくてもいいゲームの一つだと感じてしまうくらい、今作の完成度が高いと思っています。