徒然映画録『リョーマ!』 エンタメ斯くあるべし

「イエア! 日本から来たサムライボーイ♪」

突然ですが、皆さんはテニスを知っていますか?私は知っています。

すごい方向にボールが跳ねたり、サーブした球がまったく弾まなくて無条件でポイント取ったり、五感を奪ったり、十球を同時に打ったり、ネットを物理的に炎上させたり、ラケットで空間を削り取ってブラックホールを作り出す、アレですよね?

え、違う?

ということで、だいぶ前に友人と一緒に『リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』を観に行ってきましたので、その感想を。(この記事タイトルは作品名を省略させてもらいました。)

もはや概要から最強。

この映画の導入部をシンプルに言うと、こうなります。

「主人公越前リョーマがテニスの修行でアメリカに来ていたところ、同級生の竜崎桜乃がテニスギャングに絡めているところを発見。彼女を救うため、テニスでラップバトルを繰り広げていたらタイムスリップして、リョーマの父親が現役テニス選手だった時代に迷い込んでしまう――」

はい。

「うるせー、(理屈なんか)知らねー!」がまかり通る

しかし、上記のぶっ飛んだ導入部でさえも、もう許せるんですよね。
なぜなら、開幕3分でミュージカルが始まるからです。全国大会の決勝戦、リョーマと幸村の熱い戦いを、何の前触れもなく主要メンバーたちが踊り歌って盛り上げてくれます。

もちろん、負けそうになっている幸村のチームメンバーたる立海大メンバーも、笑顔で踊ってます。

私はここで悟りました。
この映画に理屈を求めちゃいけないんだ、と。

こう、勝負の駆け引きではなく、「テニスって楽しいよね。歌って楽しいよね、踊って楽しいよね」

「だから、みんな楽しいよね」

をスーパーゴリ押されたので、「あっ、はい」と素直に頷くしかなかったんですよね。

そういう洗脳を冒頭からぶちかまされたので、その後のストーリーのすべてを私は受け入れることができました。

「意外と上手、アメリカンジョーク!!」

さっきからちょいちょい見出しに変なワードを入れているんですが、これが冒頭に書いたテニスギャングとのラップパートです。

……地味に曲、いいんですよね。
韻の踏み方だったり、コテコテのアメリカカルチャーを取り入れていたり、ちゃんと決めフレーズでドヤったり。我々ラップ初心者にもとても優しくありつつ、でもチープな感じではない、絶妙なバランス。

その他にも、親父の背後霊として歌うパートがあったり、ヒロイン桜乃ちゃんポニテでテンション上がって教会で空を飛んだり、平穏な眠りを妨げられたセクシー跡部様が歌ったりと、まあとにかくシチュエーションが面白すぎるのに、歌は本当、いい。

そして、柳生。

これ、作詞作曲をすべてたしけ先生がやっているというのだから、本当ぶっ飛んでますよなあ……。

おい、テニスしろよ…………いや、テニスしてたわ。

漫画の『テニスの王子様』の魅力のひとつに、荒唐無稽な大技の連発がございます。冒頭で書いたようなヤバいやつですね。連載初期は現実でも可能なラインでしたが、関東大会あたりから人知を超えた技がいっぱい出てきて楽しいです。

でも、この映画はそんな技がほとんど出てきません。
サムライゾーンと足ニスくらいで、試合シーンはわりかし真っ当なテニスをやっています。

それでも、この映画は『テニスの王子様』としてしっかり成立しているんですよね。
それだけ『テニスの王子様』の器が大きいことを、我々も感じずにはいられませんでした。

なんでだろうな、と考えると、もう結論は一つしかないんですよね。

絶妙なバランスゆえ、楽しい。

さっきの曲も然りですが、とにかく楽しい。

テニスギャングとのバトルも然り、リョーマの父親を狙う黒幕の存在だったり、悪者との追いかけっこだったり、ライバルが出てきたり、「見てて楽しいに決まってるよね!」という要素がこれでもかと入っています。
そして、緊張と緩和がうまく組み合わさっていて、ベタだけど退屈じゃないという、これまた絶妙なバランスで、結果的に完成度が高いんですよね。

さらに、ストーリーが複雑ではないので、置いてきぼりにされない。シチュエーションと曲を思う存分味わうことができるわけです。結果、さらに洗脳されて、最後の全員集合と柳生にも一切の疑問を持たないわけですよ。

とにかく、私が驚いたのは、この映画は最初から最後まで絶妙なバランスを保っていることです。
だから一つ一つを分解すると大したことがないはずが、組み合わさると本当に楽しくなるという魔法になっています。

観ればわかるのですが、たしけ先生、本当に気合入れてこの映画作ったのでしょう。
現在も『新テニスの王子様』を連載しながら、一方で別方向にこんな楽しい映画を作ってくれたのは天才だと思います。

もうエンタメはこの映画に任せればいいんじゃないかな

この映画には頭を使う必要はありません。伝えたいメッセージを考える必要もありません。

「とにかく、楽しい!」

この感想が持てれば、もう何でもいいじゃありませんか。
私も自分の話では色々複雑なことを書こうとしていますが、
こんなエンタメド直球で来られると、もう何も書かなくてもいい気すらしてきます。

まあ、それは大げさとしても、自分がエンタメ方向に走る必要はないな、と改めて突き付けてくれた映画でした。

本当、楽しい以外の感想が出ないです。最高の楽しいです。

テニプリ知っている人なら、絶対見よう!!!!