ゲーム感想

徒然ゲーム録『ダンガンロンパ V3』~ネタバレ満載過ぎて何も言えねぇ

必然の帰結「アウフヘーベン」

では、予告通り、冒頭から思いっきりネタバレしますが、ダンガンロンパV3は、「登場人物たちのいる世界がフィクションである」ことを登場人物たち自身が知ることになります。ダンガンロンパシリーズ恒例の「世界の秘密」が、今回はこのような形で現れるわけです。意外性を追求すると自ずとこういう方向に進むとは思います。まあ、全部プレイし終わったからこそ言えることなんですけど。

1と2とアニメの3が希望と絶望の二項対立で、マンネリを避けるなら、アウフヘーベン、つまり昇華するしかないんですよね。希望も絶望ではない方向に行く。同時にV3は真実と嘘の二項対立でもあるから、これまたアウフヘーベンさせる。するとどうなるか。

その結論はとてもシンプルで「嘘でも真実でも、その想いをどう受け止めるかはその人次第」です。まあ、そうなんですよね。そうとしか言いようがない。

真実を突きつけられて憤慨するのはわかるけど。

この結論を踏まえると、V3に向けられた一部の批判はちょっと的を外しているな、と思わざるをえません。それは「この結末は従来のシリーズ作品を『フィクション世界』にしてしまって、それまでの事件がなんだったのか? と脱力してしまう。しかもシリーズファンを悪意あるように描いている」というもの。

いや、批判ではありませんね。事実であり、真実です。

ダンガンロンパシリーズはフィクションですか? はい、そうです。それぞれ物語が終わったとき、私たちはコントローラーを置き、画面を消しました。そのあと物思いに耽りながら寝て起きて、ご飯を食べました。だって、ゲームなので。フィクションなので。

我々がコロシアイを望んでいる? はい、そうです。「どんなトリックが来るかなー! 推しキャラ、生き残れるかなー! この世界の真実って何かなー!」とワクワクしながら、コントローラーの決定キーを押しました。人によっては泣きながら死んじゃったキャラのIFストーリーを描いたかもしれません。

しかし、いずれにせよ我々はゲームをしたり(褒められないけどプレイ動画を見たり)して、能動的にこのシリーズを楽しんだはずです。

つまり、よく批判みたいに書かれていることは、それこそ「真実」を書いているに過ぎません。

悪意ある喩えをするなら、登校中の小学生を轢いたトラックドライバーに対して「お前はトラックを運転して子どもを殺したんだ!」って言ってるという感じ。はい、そうですーーだから?

と、挑発的に書きましたが、このゲームで気分を害した人の気持ちを否定するつもりはありません。ただ、その憤慨をぶつけるだけでは、V3の主人公の決断を理解しているとは言えないと思います。

我々は真実を知った最原と同じことができるのか?

もし、この作品を批判するならば「フィクションに浸って気持ち良かった私たちを、急に現実に引き戻して真実をズバズバ言わないでくれますか?」と言うべきなのです。もっと言うなら「夢くらい気持ち良く見させてくれよ」なのです。

従来のファンを気持ちよくさせる、という意味でなら、この作品はそうできなかったのは間違いないし、しかも自覚的にそうしています。それを「気持ち良くない」で切り捨てるなら、それでも良いと思います。

しかし、この作品が「ダンガンロンパがフィクションである」という真実を我々に突きつけたこと。これこそまさにV3内の登場人物たちが突きつけられたことそのままです。その時に我々が「気持ち良く夢を見させてくれ」と言ってしまっていいのでしょうか? それは、第4章でゴン太たちが絶望したときに思ってしまったことではありませんか?

この物語での我々は、ゲームをプレイする一番外側の枠にいながら、ゲーム内で最原たちの戦いを喜ぶ観客であり、そして当たり前ですが、操作キャラクターである最原でもある。つまり、我々は立場が異なる三つのレイヤーに同時に存在するのです。

この物語は、最原たちが真実の先に進むことを決意して物語が終わります。では、同様に真実を知った我々はどうするのか? 我々自身も最原と同じ問いを突きつけられるのです。

そして、この問いに正解はありません。どんな選択であろうが「嘘でも真実でも、その想いをどう受け止めるかはその人次第」というテーマに帰結します。残念ながら、フィクションである物語内でこの真実を突きつけられた時点で、その問いを無視することはできないのです。

これが他のメディアと違うのは、これはゲームであり、我々がある程度能動的に物語を進めているということです。ダンガンロンパシリーズは結末が一つしかないとはいえ、コントローラーを握って操作をしている以上、我々自身がその問いを考えることになります。

そして、開発者の意図を汲み取るしかない

開発チームは「気持ちよく夢を見させてくれよ」という批判が出ることを承知の上で、ああいう結末を描いた。そこに何かしらの意図があることを汲み取らなければなりません。

その意図は開発チームから直接語られない以上、絶対的正解はありませんが、私は割と素直に「もうクローズドサークルでの殺し合いというストーリーを作る気はない」という宣言だと捉えました。そう考えた理由が冒頭で語った話ですが、「アウフヘーベンしちゃったから」ということになります。V3でアウフヘーベンして我々のいる次元にまで昇華させたので、行く先がなくなってしまったと思っています。なくなったというか、ゴールさせたんですね。

ダンガンロンパシリーズは殺人事件の推理を楽しむのと同時に、登場人物たちのいる世界の真実を解き明かすのも大きな魅力です。しかし、1と2の時点で結構な驚きは出てしまいました。2では第四の壁への挑戦も見え隠れしています。正直、3のアニメでのコロシアイは面白くなかったし、V3もラスト付近までストーリー的な驚きはなかったです。(1章はびっくりしたけど、一発限りのネタでしょうし)マンネリ化し始めている感はありました。

そのマンネリ化を回避したかったのだと素人ながらに思っています。私が開発者ならば、一旦ここで区切りをつけるべく、このストーリーは完全ゴールさせたいと考えます。じゃあ、どうやったら完全ゴールかというと上記の通りです。今までのすべてをフィクションにしてしまって、そこからの卒業ということです。どんな批判が来ても、知ってしまった時点で揺るぎなきゴールというわけです。そして、新しいシリーズをスタートさせたい。

私にはそんな宣言に見えました。

確かにダンガンロンパシリーズが続かなくなるのは寂しいものがありますが、まったく新しい世界から驚かせてくれるなら、そんな結末も受け入れていいと、私は思うのです。

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