映画感想

映画感想「キングダム 大将軍の帰還」〜 映画作品としての強度を得た!

今回は「キングダム 大将軍の帰還」の感想です。いやあ、一作目からもう7年も経っているとは。その年数を経て、この映画作品は漫画原作から離れたとしても十分鑑賞に耐えうる強度を得たのではないかと思います。

それでは、今回の心への旅に出かけましょう!

目次

  1. 王騎将軍のための映画
  2. それ以外の各シーンや演出も秀逸
  3. ストーリー構成はちょっと残念
  4. 総合的にはエンタメ作品としてレベルが高い

王騎将軍のための映画

タイトルから分かっていましたが、エンディングロールまでが王騎将軍との思い出を振り返る内容になっていたのには流石にちょっと笑ってしまいました。

まあ、思えば前作合わせてこの映画は王騎将軍のためにあると言ってもよいくらい、彼の出番や見せ場が豊富でしたね。「出陣」のくだりから明らかに優遇されまくっているし。なので、ある意味ここで王騎将軍が斃れるのはわかりきった結末でした。ある程度創作物を嗜んでいればメタ的にネタバレを喰らうのは仕方ない。

しかし、それでも盛り上がりましたよねえ。俳優たちの演技も素晴らしい。当然といえば当然ですが、大沢たかお氏の名演に有無を言わさぬ説得力がありました。元々第1作目で彼が出てきた時から、声のトーンや表情の作り方にすごく驚いた記憶があります。漫画原作の濃い顔の王騎将軍とは別の方向ですが、それでも強烈な一人のキャラクターを感じました。今作で大沢たかお氏が演じる王騎将軍というキャラクターは完成したようですしたのではないかと思います。そんな彼が演じるパワフルなバトルはまあ迫力でしたよ。矛と矛がぶつかり合う重量感、緊迫でしたねえ、ンフ。

重厚感あります。

それ以外の各シーンや演出も秀逸

と、王騎将軍メインの話ではありつつも、それ以外のシーンも非常に魅力的な演出がされていました。

特に信の未来を予感させるシーンが秀逸でした。「将軍の見える景色」というやつです。馬に乗っているとき、物理的には王騎将軍を背後に抱えているのですが、そのシーンだけは信が一人になるという。信にとっては半ば妄想ではあるけれど、我々からすればいずれ来る未来として見えるというのも中々クるものがあります。映像のエフェクトも相まって印象的なシーンでした。

それから音楽。これもベタベタな演出ではありつつも、各シーンを強烈に彩っていました。良い意味で日本映画らしくない、かなりハリウッド的なんですよね。悲しいシーンでは悲壮感漂うストリングスのメロディ、戦うシーンでは打楽器の力強いリズム。マーベル映画にもありそうなくらいベタベタなんですが、この映画はそれが良いのだろうと思います。

こうした演出面は確かに前作と比較しても洗練されてきた印象があり、漫画とは別の軸で作品単体として強度を得たのだろうと思います。

ストーリー構成はちょっと残念

一方でストーリー構成は前作の方が上手かった印象があります。戦略→戦術→戦闘からの、反転して戦術→戦略に戻っていくのは見事でした。今作はそうではなく人にフォーカスする、というのは良いと思うのですが、全部がクライマックスという感じが見え見えすぎて、逆にメリハリがきいてないように思えてしまいました。

確かに上記で書いた通り、それぞれの出来事は中身がぎゅっと詰まっていて面白いのですが、それらがどう関連しているかが見えなかったです。極端な例ですが、王騎将軍の想い人の話があって、嬴政を大王と認める話があって、そこに繋がりがない。なんでそのエピソードが今出てきたんだ?という疑問があります。

繋がりがないのが悪いわけではありません。キングダムの原作漫画はまだまだ続いているので、この映画で伏線が回収されないことは重々承知しています。そうではなくて、メリハリがない分、各エピソードの繋がりでカバーすればもう少し印象が違ったのかもな、と思ってしまいます。

総合的にはエンタメ作品としてレベルが高い

とはいえ、エンタメ映画としては相当レベルの高いところに来たなあ、と改めて感心しています。この四作目をもってキングダムの映画はいったん区切られるようですが、次のシリーズ展開もやってほしいと素直に思います。漫画原作から離れて、映画シリーズ単体として十分なパワーを得た久しぶりの作品だと思います!