アニメ感想

アニメ感想『SPY FAMILY』後半1クール 〜 笑いとすれ違いが交錯する家族の絆

アニメ「SPY FAMILY」の後半1クールは、期待以上の展開とすれ違いが織りなすドラマに満ちたものでした。明るさと笑いに彩られた前半とは異なり、家族の絆に不安の種を残す展開となりました。特にヨル、ロイド、そしてダミアンのキャラクターの心情の変化が印象的でした。

家族を守りたいヨル、儚いものと思い込むロイド

ヨル、ロイド、アーニャの3人は、前半1クールに引き続き、お互いに心を通わせる家族としての関係を築いています。特にヨルはロイドとアーニャのために料理を学んだり、突如現れた女性に対し嫉妬の感情を抱く様子もありました。つまり、ヨルはもはや四人を仮の家族ではない、手放したくない家族としての意識を強く持つようになっています。

一方、ロイドはスパイとしての任務を完璧に遂行しながらも、家族が仮のものであるという意識を抱き続けているように見えます。彼の心の葛藤は多くの場面で描かれ、ヨルやアーニャに近づく一方で、家族との距離を感じるシーンがしばしば見られました。特に、任務がうまくいけばいくほど、そういうことを考えているように見えます。なぜなら、任務が成功したら彼らはまたバラバラに暮らさなければいけないから。

普通、物語が進むほど家族の絆が強くなるように思うのですが、ロイドだけが付かず離れずの距離をずっと保っている、というのが面白いポイントです。スパイとファミリーというのが、相容れないものである、ということがタイトルの逆回収なのだと感じました。

ダミアンがこのクールを象徴するキャラに!

そして、私が思うに、この家族の関係を象徴するのがダミアンでしょう。

「え? ダミアンはフォージャー家と何も関係ないじゃないか?」と思うかもしれません。

しかし、家族として近づきたいという思いと、それと裏腹に家族と距離をとってしまう、という相反するものを抱えている構図は、まさにダミアンそのものです。彼は父親に認められるために勉強を頑張り、パーティーの後で父親と話したいという気持ちを抱えています。一方で、忙しい自分に父親が構ってくれるはずがない、優秀な兄と違って不出来な自分を認めることなんてない、という恐れをも同時に抱いています。最終話ではその相反する気持ちにダミアンが揺れ続けるのは、多くの人が子ども時代に体験したことではないでしょうか?

家族への気持ちをどう表せばいいのか?

そうした相反する気持ちをどうやって解決するのか? それは計らずしも、家族と距離を置こうとするロイドのセリフに現れていると思います。

それが「あくまで対話で相手を理解することを手放さない」というものです。

ダミアンの父親が口にしたように、他人とは究極的に分かり合えることはないでしょう。私自身、いろいろ物語を書いてきて実感することでもあります。しかし、一方ですれ違いや不安の種を解消する鍵は、やはり対話にあるのだと思います。最後の最後まで重なり合うことはないのだけれど、限りなくその距離縮めることはできると私は信じています。家族だって所詮他人です。しかし、家族として物理的に近い距離にいるのだから、対話を通じて家族同士が心を通わせ、すれ違いを溶かすことで、真の絆が深まっていくのだとも思います。

「SPY FAMILY」の後半1クールは、笑いとドラマが巧みに交錯し、なんだかんだで私も思いっきりハマってしまいました。明るい雰囲気から少しずつ暗さを増していく展開は、次の後半2クールに向けての期待が高まっています。キャラクターたちの成長や心情の変化に注目しながら、今後の展開がますます楽しみです。