観終わりました、『リコリス・リコイル』! 私の評価は「今期の覇権で間違いなし、でも私の好みではなかった」になります。
「それってどういうことよ?」
と、思う方のために、私なりに思ったことを書いていきます。
それでは、今回の心への旅に出かけましょう!
私の好みではなかったところ:葛藤が少ない
まず、これは以前の記事でも書きましたが、主人公の千束含め、登場人物たちの葛藤の描写が非常に薄いことが、私には残念な点でした。
葛藤については、以前の記事である程度書いています。
12話、13話はクライマックスですから、私の予想を外して、千束の葛藤とそれを乗り越えた世界が見られるかな、というかすかな希望を持っていました。
でも残念ながら、やっぱり私の予想を大きく超えないまま物語が終結してしまった、という印象でした。
葛藤がなかったとは言いません。12話ではヨシさんの中にある心臓をめぐって、千束が彼を殺すか否かを迫られます。あるいは13話では真島さァん!の最後の戦いで、彼を突き落とすことになるあたりは葛藤だったはずです。
しかし、それらの葛藤を千束はとても短い時間で終わらせてしまいました。彼女が変わった部分があるにせよ、葛藤のブレイクスルーがとても薄く、それよりもストーリーの進行に気を取られているうちに、物語が終わってしまいました。
そして、それは千束に限らず、たきなも同様です。
この物語において、一番大きく変わったのはたきなでしょう。DAという組織から左遷されて喫茶リコリコに来たものの、しばらくはDAにどうやって早く戻ろうか、ということが彼女の中心にありました。
しかし、千束やリコリコの仲間、色々な人たちに触れるうちに、DAに戻ることが彼女の主眼から外れていく。良い変化だと思います。でも、そんな変化の中に葛藤があったのか?と言われると、これまた薄かったのではないか、と思ってしまうのです。
それが顕著だったのが、4話の千束とのデート回(パンツ回)ですかね。
元々パンツのことなど何も気にしなかったはずが、最後にはパンツを見られて赤面するという明確な描写がありました。その前に彼女の変化の示唆である「さかなー!」は大きな話題を呼びました。
いや、確かにいいシーンなのですが、たきなが葛藤しているシーン、ありましたか?
ないですよね。
千束がパンケーキ食べて色々語って、それをある程度腹落ちさせているシーンはありましたけれども。
つまり、変化がとてもわかりやすいたきなにしても「葛藤」自体はほとんど描かれていないのです。
先にちらっと書いていますが、私は葛藤が描かれている方が好みなのです。やっぱり変化の前に色々悩んで、悩んで、ドツボにハマって、フラストレーションが溜まって、それを何かのきっかけで突き抜けていく、まさにブレイクスルー。その快感が好きなのだと思います。
一方、「リコリス・リコイル」にはそうした描写は薄かったです。
時代の流れかもしれません。令和の楽曲のイントロが短くなっているだとか、動画倍速再生だとか。テンポが良い作品が求められているのかもしれません。それが私の好みからずれているだけ、そう解釈しています。
細かい点はガバかもしれないが、完成度は高い。
と、色々言ってきましたが、私はこの作品が「エンタメとして完成度が高い」と思っています。
第1話の時点でテンポが良く、たきなに色々な出来事が起きつつ、この世界の設定も語っていく。これはとても練られた構成だと感心してしまいました。
ストーリー自体も、色々な謎や千束の設定を散りばめつつ、最終話に向けて丁寧に回収しており、理解不能になる点はほぼなし。特に後半が顕著だったのですが、「続きが気になる!」という終わらせ方が実に素晴らしかった。
また、毎週の放送後にTwitterで騒がれていたのですが、それは毎話何かしらのネタとなる話題を提供していたということに他なりません。
- 「パンツ回」
- 「さかなー!」
- 「人工心臓」
- 「ウ○コパフェ」
- 「デート回」
- 「心臓が逃げる!」
- 「真島さァん!!!」←これは私のベスト
「なんかひどいワードが多い」ということ自体、まさに話題作りなのです。Twitterは良くも悪くも、ちょっとお下劣含め、パワーワードが大好きですから。そういうパワーワードで語れることは、エンタメとしてみんなで色々語れる大事な要素だと思います。
また、作画も一部を除けば総じて安定して綺麗ですし、声優の演技もナチュラルで素晴らしかったです。特に千束は実在性が高い演技の仕方で、これは本当にびっくりしました。
一部では「色々ガバガバ」という評価もされているようですが、そんなことはどうでもいいのです。銃器の描写がどうとか、言うだけ野暮です。何もかもがリアルに描写できるわけではありませんし、そうする必要もありません。
結局はフィクションです。「そういうことなんです」で済ませることができます。それでいいんです。
主人公二人以外も魅力的なキャラクターですし、それぞれに信念があって、誰か一人くらいは好みにハマるキャラがいると思います。ちなみに私はフキが好きです。あの皮肉屋で上司には逆らえない、と思わせつつ、義理堅く初心な面があるのが可愛いですね。
あ、真島さァん!!!は別格です。
とにかく、ストーリーが面白く、キャラクターが魅力的で、画が綺麗、ネタ要素も豊富。好みに合わないとはいえ、私もこの作品がとても魅力的であることは高く評価しています。
「百合が好き!」とか「重厚なSFは苦手!」という方、あるいは「可愛いキャラがわちゃわちゃしているのが好き!」という方には間違いなくお勧めできる一作だと思います。
結論:覇権、でもやっぱり私の好みではなかった。
繰り返しになりますが、あくまで私個人の好みではなかっただけであり、この作品自体はとても素晴らしいものだと思います。
葛藤するシーンが少ないことは、テンポが良いことの裏返しです。ストーリーがテンポ良く進んで先が気になるからこそ、葛藤からのブレイクスルーの快感が少ないということです。
エンタメ性と文学性はしばしばトレードオフの関係になると私は感じていますが、この作品はまさにそれで、思いっきりエンタメ性に振り切った作品だな、と私は感じました。
今回のココベル:自分の好みではなくとも、良い作品に巡り会えて良かった!