小説感想

小説感想「図書館内乱」〜サブキャラの裏に隠れた大人の駆け引き、そしてピュアな思い

今回は「図書館内乱」の感想です。 図書館戦争シリーズの第二作目として、各主要キャラクターの掘り下げと次作への布石が打たれたという印象です。そして「内乱」の名前に相応しく、図書館組織内の駆け引きが描かれ、純粋な想いだけでは乗り切れない現実を見せています。

まず、冒頭で述べた通り、今回はサブキャラクターの掘り下げが行われた作品だと感じました。小牧、手塚、柴崎が特に中心で、それぞれ対応するサブキャラクターが登場するという構成です。

それでは、今回の心への旅に出かけましょう!

目次

  1. 毬ちゃんと小牧:きらきらひかる、からこそ傷つける
  2. 手塚慧:いけ好かないが、これからどうなるのか?
  3. 朝比奈:マジのハンパもん
  4. 理想を実現するためにピュアでいられるか?
  5. 結論:それでもピュアな気持ちは信じたい

毬ちゃんと小牧:きらきらひかる、からこそ傷つける

まずは毬(毬江)ちゃん。小牧へ想いを寄せる高校生ですが、彼らの話が純粋かつ切なくて、個人的にはこの二人が一番好きでした。何が切ないって、相手を想うからこそ傷つけてしまう、というところですね。

毬ちゃんが子どもの頃に、小牧に恋人がいるとわかったときに、相手の女性に嫌味を言ったりとか。彼女は「それをやってはいけない」と頭ではわかっているんです。わかっているけれど、焦りや挫折の気持ちが先に立ってしまって、やってはいけないことをやってしまう。同じ「好きだから」が根っこにあるからこそ、正反対の行動をしてしまうのが切ないですよね。

ここらへん、彼に相手を思うからこそ遠ざけてしまう、という矛盾した行動を取るのが「きらきらひかる」と共通している部分かもしれないと思います。

手塚慧:いけ好かないが、これからどうなるのか?

手塚慧は……今作だけでは判断できない、謎めいた人ですよね。

郁視点から描かれる都合上、間違いなく今作ではいけ好かない人として描かれています。そして、弟の光を引き込むために手段を選ばない卑怯さ、その卑怯なことを悪びれずに郁に明かしてしまう点も、極悪非道な悪の組織のトップらしい言動です。

しかし、弟の光も前作では同じように最初はいけ好かないやつとして描かれていました。それが堂上班のメンバーと関わる中で変わっていったことから、兄である慧も同じように変わるかもしれません。名目上は「図書に検閲があるべきではない」と言っていますからね。それが本心で真っ当な手段を選ぶなら、これほど心強い味方もいないでしょう。

朝比奈:マジのハンパもん

朝比奈は……なんだこいつ! ぶっちゃけ彼は好きではないです。

あらゆる男を遠ざけてきた柴崎をランチに連れ出すことができる点で、彼は頭がいいし、恋の駆け引きもできるはずです。仕事も相当できる類の人間でしょう。でも、最後にはどちらも中途半端に終わってしまった印象が拭えません。柴崎を自分の仲間に引き入れることもできないし、恋人として付き合うこともできない。

仕事か恋、どっちかに本気で振り切ればなんとかできたのではないか? と思う部分が正直あります。仕事として割り切れば、恋人ではなくとても仲の良い友人としてスカウトできたかもしれません。恋人として夢中になれば、仕事のことはともかく付き合うことができたかもしれません。でも、中途半端だからこそどちらも失ってしまった。

中途半端さの証左として出るのが、柴崎との別れ際の言葉ですね。明らかに未練たらたら。格好悪いと言ったらありゃしない。その中途半端さこそが柴崎が彼を見限った要因だと思うのですよね。彼は中々ナイスガイの印象を持っていたがゆえに、最後の後味の悪さが際立ってしまいました。

理想を実現するためにピュアでいられるか?

さて、今作はラストで王子様の正体が明かされるのですが、そんなピュアピュアな展開とは裏腹に、身内の組織内での駆け引きの論理が鮮明に描かれた印象があります。そして、私がそんな描写をわかり始めてしまって、それが個人的に悲しいところです。

建前、メンツ、借りと貸し、落とし所。大きな組織で働いていく中では、こういうことに無縁ではいられないものです。意識していようがそうでなかろうが、何かしら身の回りでこういう論理を元に動いていくときがあります。

特に玄田がそれを象徴している人物ですね。新世相の記事に対し、元恋人自身の意思か否かをちゃんと確認するあたり、確実にわかっている人です。しかし、彼の中にも実現したい理想があります。彼はその理想を実現するために、大人の喧嘩の仕方で思いを貫いていく狡猾さもあります。ここら辺が彼が有能たる所以です。

でも、私も中々そんなふうにはいかないものです。大人の論理なんて何も考えず、郁のように真っ直ぐでいけたらどんなにいいか。しかし、現実はそうではないからこそ、色々なことが起きるのです。

それこそが今作のタイトルに冠せられた「内乱」という言葉の意味だと感じました。同じ図書館の中でも一筋縄ではいかないゴタゴタ。そして、同じ理想を持ちながらも全員が全員綺麗事だけでは生きていけない。サブキャラたちがメインで描かれたからこその、内乱でした。

結論:それでもピュアな気持ちは信じたい

だけど、やっぱり根っこには郁のような純粋な気持ちを抱えて生きることを目指していきたいですよね。このシリーズも彼女の純粋な気持ちから始まっていくのですから!